作業療法と環境
みなさん、こんにちは。作業療法学科教員の中村です。
先日は立春でしたが、強烈に寒かったですね。
寒いと姿勢が悪くなりますし、肩も凝りますよね。早く暖かくなりませんかね…。
さて、私は先日出張に合わせてお休みをいただき、東京都の世田谷区にある看護小規模多機能型居宅介護「ナースケア・リビング世田谷中町」に見学に伺いました。
看護小規模多機能型居宅介護(略して「かんたき」)は、平成24年から創設された介護保険サービスのひとつで、退院後のスムーズな在宅生活への移行、病状が不安定な方や看取りへの対応、ケアする家族のレスパイト等のニーズに応える機能を持っています。
ナースケア・リビング世田谷中町には、私が大変尊敬している作業療法の村島久美子先生が関わっておられ、環境に配慮した施設デザインや、ケアスタッフへのアドバイス等を行なっておられます。
例えば、上記の2つの写真ですが、視力や認知機能が低下した高齢者に対して、
・触ってほしくない扉の取っ手はコントラストを付けず、存在感を目立たせない(上のクローゼットの写真)
・分かりやすく、使いやすくしたいトイレの扉の取っ手は、コントラストを際立たせ、分かりやすくする。また、そのスペースの目的が何なのかをビジュアル化する(下のトイレの写真)
…という工夫がされています。
確かに、初めて訪れた人にとっても「ここはトイレだ!」というのが、一目瞭然で分かりやすいですよね。
お風呂の手すりは、カタログ等を見ても白系が多いですが、こちらはビビットな赤です。
お風呂は湯気で視界がぼやけがちですが、この手すりなら安心して掴めますね。
認知機能が低下した人は環境の変化に弱く、見当識の低下(ここはどこだろう?を理解する力)や、不安により「道迷い」という症状が出ることがあります。
そういった症状に配慮して、こちらの施設の居室の壁紙はすべて違う色が使用されていました。
いちいち聞かなくても大丈夫なように、目印があると安心できますね。
管理者の方とお話ししている時に、ふと気付いたことがありました。
高齢者施設の多くでは、BGMとして演歌や民謡、童謡などが流れていることが多いのですが、私が伺った際にはジャズが流れていました。
「ジャズなんですね、おしゃれですね」の質問に、「今日はお若い頃に声楽をされていた音楽好きな方がいらしているので、この選曲なんですよ」とのことでした。
手持無沙汰で、ただなんとなくBGMやテレビを流しがちですが、それもまた環境と捉える視点、とても大事だと感じました。
そして、違う利用者さんは、スタッフのサポートを受けて、ぬか漬けを混ぜておられました。
日常的な生活の中に、その人ならではの役割を持っていただくのも大事なケアです。
作業療法士の村島先生が関わられることで、人的・物的環境の両面から利用者さんの生活行為を支える質の高いケアが展開されているのが、よく分かりました。
現在、看護小規模多機能型居宅介護には作業療法士の配置は必須ではありませんが、生活のプロデューサー・サポーターとして、作業療法士の可能性を感じることができた有意義な見学となりました。
村島先生、ありがとうございました。
さて、琉球リハの今年度のオープンキャンパスも、残すところあと1回、2/23(金)のナイトキャンパスのみとなりました。
ナイトキャンパスは、文字通り夜の開催ですが、もし昼間の方が都合が付くという方には、個別での対応もしています。
作業療法に興味がある方、ぜひ、おいでください。お待ちしています。