琉球リハビリテーション学院 作業療法学科ブログ

学校法人智晴学園 琉球リハビリテーション学院 作業療法学科のブログです。作業療法のこと、学院での様子など、いろいろ発信していきます!

作業療法の仕事紹介 ~特別養護老人ホームでの作業療法~

みなさんこんにちは。作業療法学科教員 中村です。

台風が去り、朝夕が肌寒い季節が来ましたね。

 

以前のブログでも書いたことがあるのですが、私は、2000年に作業療法士免許を取得して以降、高齢期・地域の領域で働いてきました。

先日、部屋掃除をしていたら、作業療法士になって3年目の頃に、山口県福祉人材センターの広報誌「あい・ワーク」に取材をいただいた際の記事が出てきたので、恥ずかしながら、この頃のエピソードをご紹介をさせていただきます。

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その当時、全国的にみても特別養護老人ホーム(特養)で働く作業療法士の数は少なく、また、自分自身も思いはあっても知識や技術に乏しく、入職当初は何をどうしたら良いのか、業務を組み立てることにも精一杯でした。

記事の中の私の言葉からも、そのあたりの葛藤が見て取れるかもしれまぜん…。

 

私が入職した特養は、経営者の方針で「園芸療法」に力を注いでいたり、当時としては先駆的なユニットケアに取り組んでいる施設でした。

私だけでなく、介護・看護職員にとって「ユニットケアって何だろう」という命題に対して、利用者さんの個別性に合わせたケアの在り方や、自分で意見が表出できない利用者さんのニーズをどうとらえるかについて悩むことが多かったですが、これらの答を探すうえで作業療法士としての専門知識や技術はとても役に立つと感じることが多かったです。

 

例えば、脳梗塞後に口から食べることが難しくなり、胃瘻(胃から直接栄養を摂取する方法)になっていたOさんがおられました。

Oさんは、嚥下機能の低下はあっても、認知機能的には大きな問題がない方で、胃瘻で食事を採ることについて「だんだんお腹がいっぱいになっていく感じが気持ち悪い」「口から食べたい」と、自分の気持ちを言葉で伝えることができる方でした。

生活全般をアセスメントしていくと、とにかく生活が不活発で、なんとなく体調不良を訴えてベッド上で横になって過ごしていることが多い、ということが分かりました。

「嚥下機能」という部分だけをみれば確かに口から食べるリスクが気になりますが、不活発な生活が嚥下機能の低下を招いていると考え、私は、ケアマネジャーさんと相談してこの方がベッドを離れて取り組めるスケジュール作りと、Oさんに負担なく座っていただけるための車いすの工夫に取り組みました。

たまたま私と同郷ということもあり、雑談をしたり、故郷の写真でアルバムづくりをしたりすることから始めると、若い頃、田んぼをつくっていたこと、お昼は茶がゆで済ませ、とにかく働きづめに働いて子どもを育てて大学まで出したこと…ベッドで寝てばかりいるOさんからは想像が付かない、色々な話を聞くことができました。

私がOさんから聞いた話を介護記録に書くと、ユニットの介護職員も興味を持ってくれて、介護の合間に聞いた話をどんどんと記録に書いてくれるようになり、Oさんの物語が紡がれ始めました。

そうこうしているうちに、車いすでデイルームに出られるようになり、座位保持の体力が付いてくると、バケツでの稲作りを導入しました。

「本当にこんな狭いところで育つかね…??」と心配そうでしたが、心配だからこそ「稲の様子を見に行こう」と起きあがることが習慣化され、秋には、わずかですがきれいなお米を収穫をすることができました。

別の利用者さんが育ててくれたサツマイモと一緒に、郷土料理の「芋粥」をつくり、看護師さんの付き添いのもとで口から食べることができた時、Oさんが発した「おいしいね~」という言葉は忘れられません。

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(※ 写真はイメージ図です。茶粥は、私やOさんの出身地である島の郷土料理です。山が多く平地の少ない島で、貴重なお米を少しでも量を増やして食べられるようにと、先人の知恵から生まれた郷土料理です。同じく島の特産であるサツマイモを入れるご家庭も多いです。Oさんが語られたように、農作業の合間にサラサラと掻きこむようにご飯を食べ、午後のお仕事に出かけていく…という話は、私の祖母もよくしていました)

 

生活歴を大切にしながら、個別性に合わせて他職種と協業しながら支援する…作業療法の強みだと思います。

そんな作業療法に興味のある方は、ぜひ11/18(土)のオープンキャンパス、11/22(水)のナイトキャンパスにご参加ください。

お待ちしています。